ヒロトは「出会いたかった人」

<ヒロトは俳優の仕事をあきらめ、毎日をのんびり過ごす。恋人もいないし、定職もない。それでも不安に思わず、楽しく生きている。人を緊張させない居心地の良い空気に引き寄せられ、ヒロトの周りには人生に悩む人たちが集まってくる>
 

原作を読んで僕の心の中に出来上がりすぎてしまったヒロト像を、どう生きている人間に落とし込むか。ヒロトがどういう風にものごとを見つめているかを改めて考えて芝居に臨みました。
 

(『ひらやすみ』/(c)NHK)

ヒロトは、「ぼくが出会いたかった人だ」と初めて原作漫画を読んだときに思ったんです。「こういう友達がいたらいいな」と子どもの頃から思い描いてきた人物そのまま。ヒロトは生きる才能を持ったある種の天才です。人は「ないものねだり」をしたり、「ここではないどこか」に希望を見出したりする。

でも、ヒロトは日常のなかにキラキラした宝石がちゃんと落ちていることに気づく。ヒロトが豊かな時間を過ごしているから周りには自然と人が集まってくるのではないでしょうか。

岡山天音さん

今の社会には、切羽詰まった空気があるように感じます。ヒロトをロールモデルにして過ごすことで自分が生きる現実が少しだけよくなると思える。それは、ヒロトの生き方を通して、世界の見つめ方を教えてもらったからなんです。

友達でも恋人でも長い時間を共に過ごすと、その人の目を通して世界が見えるようになる。だから、ヒロトのような友達がそばにいてくれたら、地に足のついた生活の美しさに自分ももっと気づけるようになるのかもしれません。

【関連記事】
岡山天音「自分が経験した感情をアウトプットできる場所があることはすごくいいこと」主演作『ひらやすみ』は現実とファンタジーのハイブリッド
樋口恵子 自分では動けるつもりでも、体はガタがきている。自宅での孤独死対策として「安否確認」と「地域の助け合い」で危機管理を
岡山天音「豆腐の入った桶に頭を突っ込んで死んだ春町の本を、桶に並べて売るという蔦重の発想は…」「最初に演出から伝えられたのは意外にも…」大河ドラマ『べらぼう』インタビュー
夜ドラ「ひらやすみ」 
NHK総合 毎週月~木曜 夜10:45〜11:00
【原作】真造圭伍
【脚本】米内山陽子
【出演】岡山天音/森七菜/吉村界人/光嶌なづな/吉岡里帆/根岸季衣
【語り】 小林聡美