ヒロトは「出会いたかった人」
<ヒロトは俳優の仕事をあきらめ、毎日をのんびり過ごす。恋人もいないし、定職もない。それでも不安に思わず、楽しく生きている。人を緊張させない居心地の良い空気に引き寄せられ、ヒロトの周りには人生に悩む人たちが集まってくる>
原作を読んで僕の心の中に出来上がりすぎてしまったヒロト像を、どう生きている人間に落とし込むか。ヒロトがどういう風にものごとを見つめているかを改めて考えて芝居に臨みました。
ヒロトは、「ぼくが出会いたかった人だ」と初めて原作漫画を読んだときに思ったんです。「こういう友達がいたらいいな」と子どもの頃から思い描いてきた人物そのまま。ヒロトは生きる才能を持ったある種の天才です。人は「ないものねだり」をしたり、「ここではないどこか」に希望を見出したりする。
でも、ヒロトは日常のなかにキラキラした宝石がちゃんと落ちていることに気づく。ヒロトが豊かな時間を過ごしているから周りには自然と人が集まってくるのではないでしょうか。
今の社会には、切羽詰まった空気があるように感じます。ヒロトをロールモデルにして過ごすことで自分が生きる現実が少しだけよくなると思える。それは、ヒロトの生き方を通して、世界の見つめ方を教えてもらったからなんです。
友達でも恋人でも長い時間を共に過ごすと、その人の目を通して世界が見えるようになる。だから、ヒロトのような友達がそばにいてくれたら、地に足のついた生活の美しさに自分ももっと気づけるようになるのかもしれません。
