(写真提供:Photo AC)
内閣府が公表している「令和6年版 高齢社会白書」によると、令和52年の平均寿命は男性で85.89年、女性で91.94年になる見込みだそうです。年々平均寿命が延び「人生100年時代」ともいわれる昨今ですが、92歳の評論家・樋口恵子さんは「80代、90代を心身ともに健やかに生きるのは至難の業」と語っています。そこで今回は、樋口さんの新著『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』から“ヨタヘロ期”を生きていくための心得を一部ご紹介します。

高齢になったら、安否確認と地域の助け合いが必要

家のなかでの転倒は、大変なことになり兼ねない

誰しも「高齢になっても元気なうちは自宅で過ごしたい」と思うものです。しかし問題は、自分では普通に動けるつもりでも、体はガタがきているということ。一人暮らしの場合は、それが大きなリスクになります。

私も家のなかで、ちょっとしたはずみで転ぶことが多くなりました。90歳を過ぎた頃に、段差が10センチくらいしかない玄関の床からたたきに転落して、顔面を強打したのです。赤、青、紫のあざができ、しばらくしたら黄色に変わり、まるで「五色のお岩さん」のようでした。

幸いなことに、その時は気絶しなかったので、よろけながらお隣に行って助けを求め、電話をして連絡のついた人には来てもらいました。お隣さんには「何かあった時はよろしくお願いします」といって、改めて緊急連絡先をお渡ししておきました。

また、その数年前には階段から転げ落ち、体のあちこちを打撲する事件がありました。幸いにもその日、たまたま娘が家にいたので、「助けてくれ〜」と叫んで起こしてもらい、なんとかなりましたが……。医師である娘は、私の体の状態をみて傷口を消毒し、「一日静かにしているんですね」といい残し、出勤してしまいました。