SOSを発信できる手立てを考えておくことが危機管理に

厚生労働省の調査によると、地域の人々が「お互いに助け合っている」と思う人の割合は、60~69歳で48.8%、75歳以上で59.5%。年齢が高くなるほど、「思う」と回答した人の割合は高くなっています[注3]。

助け合うためには、地域の人との結びつきが必要です。生活協同組合など社会活動のグループに入って、仲間とのつながりをもつことも、自分を守ることになるのではないでしょうか。

もちろん、セキュリティ会社と契約して、何かあったら駆けつけてもらえるようにしたり、IT機器システムを活用して離れて住む家族に知らせが行くようにするなど、個人的な努力も必要でしょう。そのうえで、地域との結びつきがあって、地域に自分の存在を気にかけてくれる人が何人かでもいることが大事です。

70歳を過ぎたら、いざという時にSOSをどうやって発信するのかを考えておくことも、老いの準備の一つです。そのトップにくるのは家族だと思いますが、もっと視野を広げて、二重三重にセーフティーネットを用意しておくと安心です。

その意味では、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型の有料老人ホームなどに住み替えをすることも選択肢になり得ます。このような住まいは、見守りサービスがあって、ブザーを鳴らせばスタッフが来てくれるので心強いのです。

体が動かなくなったり、認知症が進んだりした場合には、また別の手立てを考える必要がありますが、最低でも安否確認をしてもらえると考えれば、見守りのある入居型の高齢者向け施設はメリットがあるのではないか、と考えているこの頃です。

注1 シルバー人材センター:「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に定められた、地域ごとに設置されている会員組織。原則60歳以上が会員として登録可能で、仕事の種類や発注などの詳細は地域のシルバー人材センターにより異なる。

注2 生活支援コーディネーター:地域支え合い推進員とも呼ばれ、地域で高齢者が元気に生活できるよう支え、地域内にある住民組織や関係団体との調整役を担う専門職。

注3 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」2020

※本稿は、『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』(清流出版)の一部を再編集したものです。


老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』(著:樋口恵子/清流出版)

経験、実感、調査データからひも解く、ヨタヘロ期のココロエ。

わたくし92歳。ムリせず、楽しく、少しがんばって、暮らしています。