内閣府が公表している「令和6年版 高齢社会白書」によると、令和52年の平均寿命は男性で85.89年、女性で91.94年になる見込みだそうです。年々平均寿命が延び「人生100年時代」ともいわれる昨今ですが、92歳の評論家・樋口恵子さんは「80代、90代を心身ともに健やかに生きるのは至難の業」と語っています。そこで今回は、樋口さんの新著『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』から“ヨタヘロ期”を生きていくための心得を一部ご紹介します。
毎日が「老っ苦う」。うまくつき合うワザがある
後期高齢者の仲間入りとともに湧いてくる億劫の虫
歳をとったらすべてが億劫さとの闘いです。食卓を整えるのも、お風呂に入ることさえも、なかなか行動に移す気になりません。体を動かさないと次に進めないので、「エイッ!」と気合いを入れて無理やり自分を鼓舞している状態です。
億劫は「老っ苦う(おっくう)」。これを老っ苦うといわずして何と呼べばいいのでしょう。まさに、老いの苦しみとの闘いです。
友だちに会いに行くのも、以前はあんなに楽しみにしていたのに、いまは雨でも降ろうものなら、出かけるのが億劫でやめてしまうありさま。家で寝っ転がって、テレビでもみていたほうが楽だと思うからです。
「これではいけない」と思い直し、そのたびに、億劫を追い払っているわけですが、闘い過ぎると疲れ果て、逆に生きる気力が萎えてきます。がんばりが効かないのも、また老いなのです。
はて私は、何歳ぐらいまで億劫さを感じなかったのか?
振り返ってみると、70代半ばくらいまでは、地方での講演も苦にならず、元気よく行っていました。それが「アラ傘寿」の声を聴くようになった頃から、億劫の虫が頭をもたげてきたのです。
75歳以上の人を「後期高齢者」と呼ぶのはいかがなものか、と思っていましたが、75~80歳くらいが、老いの階段を上がり始める一、二歩めであることは認めざるを得ません。