内閣府が公表している「令和6年版 高齢社会白書」によると、令和52年の平均寿命は男性で85.89年、女性で91.94年になる見込みだそうです。年々平均寿命が延び「人生100年時代」ともいわれる昨今ですが、92歳の評論家・樋口恵子さんは「80代、90代を心身ともに健やかに生きるのは至難の業」と語っています。そこで今回は、樋口さんの新著『老いてもヒグチ。転ばぬ先の幸せのヒント』から“ヨタヘロ期”を生きていくための心得を一部ご紹介します。
自分の体を粗末にせずに、よく生きるための検診を
年だからとあきらめないで、最良の選択をする
2022年の4月、私は卒寿を目前に控え、乳がんの手術を受けました。高齢ですから、全身麻酔をかけての手術ができるかどうかを判断するために、心臓のほか、いろいろな臓器を調べましたが、それにとても時間がかかりました。
ここ20年の間に、食道炎を患ったり、大動脈瘤を切除したり、けっこう大きな病気をしているので、医師も慎重にならざるを得なかったからです。
手術を決断する前には、ホルモン剤の服用でがんを小さくするという方法を試したのですが、効果は期待したほどではありませんでした。高齢になってからのがんは、一般的にはゆっくりと進行するので、ホルモン剤で抑えながら寿命がくるのを待つ、という選択肢もありました。
しかしその場合は、急にがんが大きくなるリスクが伴い、その不安はぬぐいきれません。乳がんの末期患者の療養はホスピスなどが担っていますが、まだ十分とはいえないようです。
いくら老い先が短くても、こうしたことを踏まえて、手術の決断に至ったというわけです。幸い、術後の経過はとてもよく、いまではすっかり回復しましたが、半年に一度の検診は、しっかり受けています。