性格は、傷ついた自分を守るバンソウコウ

子どもの頃の傷つきは、その後の性格形成にも大きく影響します。

もちろん、性格の土台には生まれ持った気質があります。陽気な人もいれば、静かな人もいます。どれだけ心理学を学んでも、自分の気質をガラリと変えることはできません。

私たちの性格、持って生まれた気質の力を借りて、子ども時代の傷を保護し、埋め合わせるために形成されたと考えられます。傷ついた自分を守るためのバンソウコウの役割が性格というわけです。

例えば、生まれつき陽気な人が傷つきを体験したら、あえて明るく振る舞って、周りの人を笑わすことで切り抜けようとするかもしれません。生まれつき不安を感じやすい人なら、より防衛的な態度を身につけるかもしれません。

傷を埋め合わせるためにその人なりのスタイルを身につけていく中で、性格はつくられていきます。傷が多いほど、バンソウコウもたくさん必要になるでしょう。

そう考えると、性格に良いも悪いもないことが理解できると思います。その人が生き延びるために必要だったバンソウコウの層が、今、性格として表れています。
ですから、性格は簡単には変えられないし、変える必要もありません。

小さな傷をいくつも抱えながら、誰もが一生懸命に生き延びてきました。私もあなたも、これまでよくがんばってきました。そんなふうに自分のことも他者のことも見てあげられたら、この世界をもっとやさしく感じられるのではないでしょうか。
 

『心を病む力: 生きづらさから始める人生の再構築』(著:上谷実礼/東洋経済新報社)