役になりきるのではなく

父からは「役に振り回されたらだめだ」とよく言われます。父は、どんな役を演じていても、結局は俳優の素の部分、人間性が出るという考え。だから、俳優が本来持っている魅力や素の部分を役に生かしたほうがいい。

自分と似ている役もあれば、真逆の役もある。「役になりきるのではなくて、真威人は真威人なりの役を探せ」と言われています。演じる人物の性格や血肉となる設定、情報の要素があって、その上に演者の魅力を載せるから、役が輝くと教えられました。

藤岡真威人さん
藤岡真威人さん

転機になったのは2024年のドラマ『ウイングマン』です。連続ドラマ初主演でしたし、演じた健太は好きなものには熱中するまっすぐな人物。僕も熱しやすくて、興味があることはとことん追求するタイプなので、演じる上で共感する部分が多くて、役に自分の魅力を載せられたという手ごたえがありました。

今回、挑戦する舞台『忠臣蔵』では剣豪の堀部安兵衛を演じます。父からは、「人物を絶対に深掘りするように」とアドバイスを受けました。安兵衛は忠義に篤く、曲がったことは大嫌い。「忠義を尽くすためにどう動くか」が安兵衛の判断基準。自分の中に行動の軸を持っている部分は、僕自身と重なる部分がある。自分と安兵衛に共通する部分を探って、魅力的な役にしたいと思っています。