133の国と地域を旅して、625ヵ所もの世界遺産を訪れている写真家・富井義夫さん。40年以上にわたって世界中を巡ってきた富井さんによる、『婦人公論』での新連載「世界遺産を旅する」。第8回は、「シュテファン大聖堂」をご紹介します
希代の芸術家が築いた
宗教と歴史と美の殿堂
オーストリア
いよいよ年の瀬が近づいてきました。街がイルミネーションで彩られると、わくわくしますし、同時に気持ちが急くような感じがします。
この時期になると思い出すのが、シュテファン大聖堂のクリスマスミサです。ベートーヴェンやシューベルトなど、多くの作曲家が活躍し、《音楽の都》と呼ばれるようになったオーストリアの首都ウィーン。
その街のシンボルとして聳え立つのが、大聖堂です。600年以上の歴史があり、戦火や疫病などの困難に見舞われるたび、民衆の心の支えとなってきました。かつてヨーロッパで栄華を極めたハプスブルク家の歴代君主が眠る墓所であり、モーツァルトの結婚式や葬儀が行われた場所としても有名です。
