愛未ちゃんに寄り添ってあげられたら
<50代最後の年に橋之助さんの婚約という大きな幸せ。相手の能條さんは三田さんと同じく、芸能界から歌舞伎の家に入る。三田さんから見て、歌舞伎界の「奥様」の世界は変わったのだろうか>
時代によって変わってきているように思います。34年前に来た時、お義母様には「あらあら新人類ね。私がお嫁に来た時はね……」と言っていろいろなお話をうかがいました。お義母様がお嫁に来た頃は、そうそうたる先輩歌舞伎役者の奥様だけで劇団みたいなものを作ってお芝居をしたり、奥様だけで旅行したりしていたそうです。でも、私はお嫁に来て以来、先輩役者の奥様たちと一緒に旅行したりしたことは一度もありません。
芸能界から歌舞伎界に来た時、山城屋のおば様(四代目坂田藤十郎さんの妻で参院議長を務めた扇千景さん)や音羽屋のお姉様(七代目尾上菊五郎さんの妻で女優の富司純子さん)も宝塚や同じ芸能界からお嫁入りされたので、気にかけてくださり、よく声もかけていただきました。
当時、私は芸能界を引退するつもりでしたが、お義母様たちから「引退する必要はないんじゃない」と言われました。歌舞伎役者の妻は、夫が出演する舞台を取材してくださる記者さんの対応や自ら宣伝を担うこともあるから、無理に引退する必要はないと。仕事をセーブし、開店休業状態ではありましたが、引退宣言はしませんでした。
愛未ちゃんも、芸能界から全く違う世界に入ってくれます。私も辛かったことやしんどかったこと、言葉にできない苦労がたくさんありました。人に言うべきではないと自分の中で抱え込んでしまうことも。その経験があるから、愛未ちゃんの気持に寄り添ってあげられたらと思います。