自由に動ける人たちが妬ましい
すべての段取りがついたところで、心はドロリと重たい。母親なのに家を空けるなんて。交通費以上の価値があるのか? この前も行ったのに? 子どもがかわいそう?
家族を置いて外の世界へ繋がろうとすることへの罪悪感が、澱のようにずっとへばりついている。
独身の頃は「最近お金使いすぎかな? 翌日の仕事、キツイかな? あ、スマホの充電器も用意しとかなきゃ」と頭をよぎるくらいでササっと東京へ出かけられた。
だが今の私が背負っているのは家族の生活そのものだ。同じ「東京へ行く」という行為でも、あの頃とは全然違う。
「あんたらはいいな、自由で」
自分の予定だけで自由に動ける人たちの楽しそうなSNSの投稿に、つい、そう嫌味を言ってしまう。彼らが「自分一人の人生」を100%自分自身のために使い切り、軽やかにステップを踏んでいる姿が、どうしようもなく妬ましいのだ。「下北沢」っていうのがまたオシャレで羨ましい。
私がどれだけ念入りに準備を整え、各所に頭を下げて出兵の許可を得たとしても、抗えない現実が突然牙を剥くことがある。
数年前のあの日のことを、今でも鮮明に覚えている。
