嫌な予感がするLINEの着信

11月のとある日曜日。例の如く事前に調整に調整を重ね、私は東京の出版社を仕事で訪れた。
仕事で家を空ける時はいつも、玄関で「お母さん」の分厚い皮を脱いで、罪悪感と一緒に引き剥がしていくような感覚で出る。

昼前には渋谷の高層ビルにつき、眼下に広がる都会の景色を眺めながらも、心の隅では、この時間を支払うためのツケを恐れる逃亡者のような心地で編集者と打ち合わせをしていた。

すると、打ち合わせ中、スマホがポケットの中で振動した。LINEの着信っぽい。2度、3度と時間を置いて、それは鳴っていた。……嫌な予感がする。
スマホを確認できないまま打合せが終わったのが12時すぎ。一旦駅前にランチに行こうと編集者と一緒にオフィスを出るとき、やっとそのLINEを確認することができた。

予感は的中していた。
「長男が急に発熱。インフルエンザかも」

「日曜だけど、病院どこ行けばいい?」

「やっぱりインフルだった」

頭が真っ白になった。
どうしようどうしようどうしよう。私のせいだ。母親のくせに! 何やってるんだ私は!
ごめんなさい、長男! 早く帰らなきゃ! そばに行かなくちゃ!

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