鋭くも優しい竹中優子ワールド
素顔で生きてきたからシミも勲章と笑う女の顔が醜い 『輪をつくる』
これは、言いたくてもなかなか言えない本音といえるものですな。シミは悪いものではないですが、この歌の眼目は「素顔で生きてきたから」「シミも勲章」という、この作中の女性の図々しさではないでしょうか。
素顔というのは物理的なことにも、精神的なことにもとれますが、人は社会や人間関係の中で、剥き出しの素顔を見せないように、言葉を選んだり、お化粧をしたり、本音と建前を使い分けたりするもの、その中で「素顔で生きてきたから」というフレーズは、図々しさと自己中心的な印象も与えます。
「シミも勲章」というフレーズも同じ。加齢を肯定的に見るのはわたくしめは大賛成でございますが、「シミも勲章」とはやや自己肯定が過ぎるというもの。
しかし、この年齢への過剰な自己肯定と、お召し上がりいただいた歌は、決して衝突しません。作者の特性は年齢への価値観ではなくて、人の心の本質を見抜く力。作者はこの女性に、何かしらの思い上がりを感じたのでしょう。
竹中さまの歌はいつも本質に敏感で心が丸裸。だからこそ傷つくことも多いかもしれません。「歳のこと話題にするなよ」も鈍感だったら聞き逃してしまいそうなフレーズでもあります。でもそこに引っかかる感性を持っているからこそ、先ほど挙げたような鋭くも優しい歌たちが生まれるのですね。
え? お嬢様、わたくしめの年齢でございますか?
いやはや、ええっとそれは、うむ、いくつに見えますー? わ、冗談でございます、ちょっとデリカシーないことをやってみたかっただけでして! ぎゃー! 殺さないで!
今回ご紹介した歌人
竹中優子(たけなか・ゆうこ)
1982年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。2016年「輪をつくる」50首で角川短歌賞、22年に第1歌集『輪をつくる』で現代短歌新人賞、現代詩手帖賞を受賞。24年『ダンス』で新潮新人賞を受賞、第172回芥川龍之介賞の最終候補となる。
