撮影:山形屋平兵衛

 

本家玉壽軒
紫野

ふっくらとした大内山の
三色の落雁の中には、
一粒の大徳寺納豆。
清々しい和紙に包まれた
小粒の菓子は、
禅の名刹がある
洛北の地名を冠す

堀川今出川から少し西へ入ったあたりにある本家玉壽軒(ほんけたまじゅけん)。和洋折衷の店構えは明治元年の建築で、銅板の格天井(ごうてんじょう)など当時の意匠がそのまま残ります。古くから京都の各宗派の本山御用達を務めてきた老舗で、今も数多くの社寺にご紋菓(寺院や神社の紋が入った菓子)などを納めています。

紫野といえば、禅宗の本山のひとつである大徳寺のあるあたりの地名。その大徳寺の名物として知られる大徳寺納豆を使っているのが「紫野(むらさきの)」です。御用でお寺に出入りするたびに納豆をちょうだいするので、先々代の店主が何か菓子に使えないかと工夫したのが始まりだとか。現在は大徳寺門前にある大徳寺納豆の専門店「一久(いっきゅう)」のものを使用しています。柔らかな落雁の中に一粒の大徳寺納豆が潜んでいて、ほろりと解(ほど)ける落雁と滋味深い納豆の塩梅が絶妙。ちょっと一息つきたい時にも重宝する甘辛味の一品です。