長年受け継がれてきた文化や技術も…
では日本らしさとは何でしょうか?
日本とは「和」の国、すなわち和の心が流れる国です。和の心とは、山や川をはじめ針一本にまで万物に神様が宿ると信じて感謝する心。そして万物に神性を感じるからこそ、我々は自然や周囲と共生しつつ物を創り、でき上がった物を大切に扱う民族でした。
「合理主義」がどんどん効率や早さを求め、より無駄を省いて前に前に進んでいく生き方だとしたら…。「和の心」は周りの声を聞きながら共に歩む、だから時に間をとることも必要となるので、手間がかかり、非効率で、ゆっくり進んでいく生き方でしょうか。
日本にはこの生き方を体現したさまざまな文化が伝承されてきました。
例えば、伝統的な日本式の木造建築物は、山に生えていた木々のバランスを再現しつつ家を作ってきました。南に生えていた木は寒暖差や乾燥に強く、北に生えていた木は寒さや湿気に強いので、それぞれ南と北の柱として据えます。個々の木々の強みと弱みを活かしつつ、長く快適に暮らせる「家」という「山」を現すのです。
私の生家は木造建築でした。小学校2年のときに増築したのですが、一年近くかかってやっと完成しました。
同時期に、山が切り開かれて新しい住宅地ができ、工場であらかじめ作られた柱や壁をあわせていくプレハブ住宅が、あっという間にどんどん建っていきました。私は子供ながらに「うちの家はなんでこんなに時間がかかるのだろう?」と不思議に感じていたのを覚えています。
漆塗りの茶器は、同じ木から蓋と胴体を削り出し(木地作り)、下地作り、中塗り、上塗り、加飾、仕上げと、100前後の工程を繰り返すことで、長きにわたり狂いなき姿と深い光沢を備えることができます。
しかし、近年は蓋と胴体を別個に量産し、漆の塗料を吹き付けた安価な茶器が市場に広がり、私が茶器を仕入れていたメーカーは3年前に廃業されました。
