へえ! それはこんな顔でしたか

ある夜遅くに、ひとりの商人が紀伊国坂を上っていると、泣きながらしゃがんでいる女を見つけた。

心配して声をかけたところ、振り向いた女の顔は目も鼻も口もない。

商人は驚いて逃げ出すと、夜鳴き蕎麦屋の灯りを見つけて飛び込んだ。

(写真提供:Photo AC)

必死で今あった怪異を伝えようとすると、蕎麦屋の主人が振り返り、「へえ! それはこんな顔でしたか」と卵のようなつるりと何もない顔を見せる。

八雲は、これを東京の紀伊国坂によく現れたという狢の怪異として紹介している。

※本稿は、『ムー特別編集 図説 日本の妖怪百科』(ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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