「『これはいらなかったね』っていうものに気づくきっかけにはなったんじゃないかな。」(大根さん)

大根 日本人は忘れっぽいし、徐々に戻っていくと思いますよ。もちろんまったくの元通りではないだろうけど、「これはいらなかったね」っていうものに気づくきっかけにはなったんじゃないかな。

清水 大根さんは、なにがいらなかった?

大根 一番思ったのは「移動」じゃないですか。わざわざ出かけなくても、打ち合わせできることがわかったし。

清水 いまは冠婚葬祭もできなくなっているよね。

マキタ 結婚式だったら延期してもなんとかなるけど、葬式はね。

清水 でも私が故人だったら、盛大にみんなが集まって葬式をしてくれなくてもいいなー。

マキタ ただ田舎において、葬式は「義務」ってところがありますからね。さほど親しくない関係でも自動的に香典袋を持っていくようなシステムで。そういう人たちは今回のことでいろいろ考えたんじゃないですか。あ、そういえば昔、葬式に出たときに、人はこういうタイミングでかつらをつけ始めるのかって思ったことがあって。

清水 なにそれ(笑)。かつらをつけ始めるきっかけが葬式だったってこと?

マキタ うちの本家のおばあちゃん、99くらいの大往生で亡くなったんですよ。東京から駆けつけて、兄貴とふたりで遺体のそばにいたら、親戚のおねえちゃんの夫が遅れてやってきて。見たら、ヅラかぶってたんですよ。

大根 それまでは薄かったの?

マキタ そうですよ。突然ふさふさになってるから、親戚一同で「えっ?」ってなって。でも「ヨシダさんそれは?」って聞ける雰囲気じゃないんですよ、葬式だから。

清水 あたりまえでしょ!(笑)

大根 一番のテーマは、おばあさんが亡くなったことだしね。ヨシダさんだって、そのためにヅラかぶってきたわけでしょ。

マキタ 絶対「いまだ!」と思ってかぶってきたはずなんです。この場ならツッコまれないって。

大根 じゃあ、その日がヨシダさんのヅラスタートなわけだ。

マキタ 人の死を、ヅラデビューのタイミングにしたんですよ。あと、みんなに一度に周知できるって思ったんじゃないですか。

清水 確かに。勉強になるね。

マキタ 昔から、ヅラは転勤のタイミングでかぶる、とか言われてきましたけど、このコロナ禍明けがそういうきっかけになることだってあるわけですよ。