ひとり飲み最高
私にも普通の会社員の友人がいないわけではない。親族もカウントすると、定刻で働く人がマジョリティで、あくまで自分はマイノリティ。この「今日、どう?」の話を会社員の友人たちにすると「……まあ、時間が合えばいいんですけど」と、やや難色を示される。決まった時間で生活をしているのだから、平日に人と会うのは100%楽しめないだろうし、誘うこちらも気が引ける。ただ限られた週末の休日に、予定を合わせるのもなかなか難しいだろう。以前も私だけが個人事業主で、他が会社員……のフォーメーションで食事をしようとしたら、数ヵ月先まで予定が合わなかった事態に陥った記憶がある。
おそらく読者の皆さまも時間の使い方には、悩ませられているのではないだろうか。
そんなときに中年と自由業そして、独身のプロとして推奨したいのが、ひとりで出かけること。令和には「1人で外食はできない」といった人がいるのも重々承知しているが、ひとり行動にはさまざまなメリットが詰まっている。まず誰かと調整をする必要がない。行きたいところ、食べたいもの、体験したいもの。気の赴くままでいい。例えば飲食店。同伴者を探していると、いつ行けるのか分からなくなってしまう。その店はいつの間にか大人気店になっていて、予約さえも取れなくなる可能性がある。それなら行けるうちに行く。大丈夫、店のスタッフは信じられない数の客を捌いているので、ひとり入店も大して気にしていない。そう、意外と他人は自分をそんなに見ていない。
冒頭の「中年こそ出かけたほうがいい」に戻るが、出かけた先には何かしらの出会いがある。それがたまたま隣席に居合わせた客かもしれないし、本屋で出会った没入できる一冊かもしれないが、ひと言、ふた言でも会話は生まれる。このコミュニケーションが心を腐らせないカギだと思う。私は40歳からひとり行動派になり、今では和食店のフルコースも楽しんでいる。そこに「今日、行かない?」の突発的な誘いが加わって、何とか腐らずに生きているようなものだ。
加えて77歳の母の発言も思い出す。地元で数ヵ月先のオーケストラのコンサートチケットがあるので、取ろうかと誘うと断られた。
「年を取ると先々の予定がちょっと怖くて、立てられなくなるのよ。いつお父さんも私も病気になるのか分からないでしょう。お葬式だってあるじゃない。でもお医者は『外に出ましょう』と言う。確かにそうなんだよね。だから友達とほんの少し先の約束をするようになったかな」
今は家事育児でまったく時間がない人だって、必ずいつかはひとりの時間が訪れる。その先には母の言う、体力的な事情にも抗えない。そうなる前に少し、フッ軽の訓練をしておくのは得策かもしれない。そして今夜も私は、さっき決まったスケジュールで広告代理店の友人と餃子を食べに行く。

