私は藤井七段がデビューした頃から「いまは天才に近い秀才。20歳で八段になっていれば天才と呼びたいが、どこかで伸び悩んで20歳で六段あたりでいれば普通の人になる」という言い方をしていた。

すでに七段になっているということでは、「普通の人ではなかった」といえる。だが、やはり天才と呼べるところまで行ってほしい。そのためにも早く八段になることが望まれる。

現在の八段に昇段する条件は、竜王位一期獲得、順位戦A級昇級、タイトル二期獲得、七段昇段後公式戦190勝のいずれかになる。彼にはA級昇級によって八段となり、その勢いのままA級順位戦で一位(最高成績者)となって名人戦の挑戦権を得てほしい。

私は18歳でA級となり、20歳で初めて名人戦に出た。藤井七段なら22歳くらいまでに名人戦に出られるかどうかが目安になる。

 

「秀才型」の天才と「対応型」の天才

藤井七段は「秀才型の天才」である可能性が高いと思っている。

天才には「秀才型」と「対応型」がある。

秀才型の天才というのは、継続的な研究ができるタイプだ。努力を続けることも才能なので、努力によってもともとの資質を伸ばしていくタイプである。羽生九段もここに含まれると思うので、タイプとして藤井七段は羽生九段に近い。

対応型の天才というのは、「ここ一番」というときに集中して研究して、それを結果に結びつけられるタイプだ。大山康晴十五世名人がその代表に挙げられる。大山先生は「タイトル戦の数日前から調整した」と著書にも書いていた。短期的な調整をしっかりと結果に結びつけられていたということだ。

大山先生のマネは、誰にでもできるわけではない。しかし藤井七段であれば、これから羽生九段に負けない成長を遂げていくことは考えられる。

いまの将棋界において、将棋ファンでなくても名前を知らない人がいない棋士は、羽生九段と藤井七段くらいだろうか。

そういう存在だからこそ、将棋界のためにも立ち止まってほしくない。


二人の「天才」の「公開対局」が初めて実現!!

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