おかしいならおかしいと粘り強く言い続けるしかない

安藤 私は自衛隊による駆け付け警護などは時々の必要に応じてやるべきだと思います。でも安倍さんが(米艦船に日本人母子が乗っている)パネルを出して説明した、有事の際に米国の艦船が海外の邦人を突然迎えに行くようなことは非現実的じゃないですか。

伊藤 たしかに。

安藤 そもそも11もある安保関連法案を全部まとめて通す、ざっくりした感覚がおかしいでしょう。具体的な例をもって、なぜこれが必要なのかをちゃんと示してくれなければ。

伊藤 最近私が気になったのは出入国管理法の改正です。これは安倍政権がというより、政治全体の劣化だと思う。「人口が減るから労働力を外から持ってくる」という発想で、基本的には与党も野党も賛成している。でも、結果的にはこの国が移民大国として一歩を踏み出すということでしょう。

安藤 それをきちんと国民に説明していませんよね。

伊藤 長年積み上げてきた国家像と、住み続けてきた人たちの暗黙の了解事項が、壊れていく可能性がある。そのことに関して基本的なところで与野党がちゃんと話し合ったかというと、何もしていない。野党は法案の不備ばかり突いて、与党も安倍さんも絶対に「移民法」とは言わない。

安藤 言いませんね。

伊藤 深くものを考えないで政策を進めているようで、これで政治本来の役を果たしているのだろうかと、大変疑問を感じました。

安藤 こういうことが続くと無力感を覚えます。でも無力感に負けてはいけない。元号が変わっても政治の流れが自然に変わるわけではありません。おかしいことはおかしいと粘り強く言い続けるしかないし、一般の人たちに政治を見捨てないでほしいと思いますね。

伊藤 今、政治の世界に一番欠けているのは、ビジョンの競い合いだと思うのです。当面の課題の解決も大事ですが、30年後、40年後、50年後のこの国をどうしていくのか。自分たちの将来、この国の未来に対して答えを出してくれる政治を求め続ける。それがもっとも重要なことではないでしょうか。