民主党政権というトラウマ

安藤 それから平成の政治を語るうえで、良くも悪くも欠かせないのは、やはり民主党政権の誕生ですね。

伊藤 もとは第一次安倍政権での参院選大敗と、安倍さんが体調を崩されたことによる自民党のオウンゴールがきっかけでした。続く福田康夫政権、麻生太郎政権と、どんどん支持率が回復不能な状況に陥り、新政権が生まれた。でも民主党政権はなぜ失敗したと思います?

安藤 私、たまたま昨日、『民主党政権 失敗の検証』という本を読んでいたのです。その本によると、民主党にいた人たちはまだ失敗したという認識がないということですね。

伊藤 そう。一強多弱という現在の状況を作り出した彼らの最大の問題は、なぜ失敗したのかをきちんと総括していないことです。失敗の理由はいくつかあります。ただ、民主党政権はまったく新しい政権でした。新人はデビュー戦で失敗すると取り返しがつかない。その最初のランナーを鳩山由紀夫さんにしてしまった。

安藤 鳩山さん、菅直人さん、野田佳彦さんという流れでしたね。

伊藤 鳩山さんは人柄もいいし、個人的に嫌いではない。でも政権の最初のリーダーに持ってきたのは間違いだったのではないかと思います。

安藤 どんな背景で鳩山さんが最初の首相になったのですか。

伊藤 前年まで小沢さんが党代表だったのですが、スキャンダルで降り、鳩山さんと岡田克也さんで代表選を戦った。世論は岡田支持でしたが、小沢さんが全面的に鳩山さんを推したのです。

安藤 小沢さんは岡田さんになると自分のコントロールが利かないと思って、鳩山さんを推したと。

伊藤 そうですね。もし最初の総理が岡田さんだったら、かなり違っていたでしょう。ただ、民主党政権はいいことも結構やっている。公立高校の授業料無償化とか、安倍政権が「人づくり革命」としてトレースしている「コンクリートから人へ」とか。

安藤 民主党へのネガティブな評価は、イメージ的な部分も大きいですね。民主党政権下で、東日本大震災という大変不幸な惨禍が起きた。それに対応する政府の混乱ぶりに、国民は心もとなさを覚えました。

伊藤 そのイメージを「民主党のトラウマ」として、安倍さんは最大限に利用しています。結果として、それが復活した安倍政権を、消極的支持を含めて補強する形になっている。

安藤 第二次安倍政権以降、一強体制と圧倒的な数の力によって、国の形を変えるような重要法案が次々と強行採決されていきました。

伊藤 そうですね。安保法制などはその典型です。