共同墓や自然葬など、これまでの常識にこだわらないお墓が今増えている。先祖代々の墓所を子孫に持ち越したくないと考えた女性たちに、行動を起こしたきっかけや直面した難問を聞いた。おひとりさまの岩瀬さん(仮名)が、自分らしい墓を選んだ理由は(取材・文=山田真理)

一緒のお墓に入ると思うと、死ぬことも寂しくない

家や血縁などに縛られず、自分のために自分らしいお墓を選んだ女性が、岩瀧恵子さん(63歳・仮名)だ。きっかけは9年ほど前、ノンフィクションライターの松原惇子さんが、おひとりさま女性の互助組織「SSS(スリーエス)ネットワーク」という団体を立ち上げたと知ったことだった。

「ずっと独身で働いてきたのですが、高齢になった両親に頼まれて実家に戻っていた時期でした。この先自分はどうなるのかという不安もあって。でもSSSのセミナーに参加するうちに、同じ価値観を持つ人たちとの活動が楽しくなり、自分も会員になろう!と思いました」

活動のなかで、恵子さんが興味を惹かれたのが「女性のための共同墓」だったという。SSSでは「一緒に眠る人がいると安心」という会員の声を受けて、2000年、東京都府中市の霊園「府中ふれあいパーク」内に、「女性のための共同墓」を建立していた。

「霊園はバラが綺麗なことでも知られています。共同墓も、クリスタルボードに囲まれたデザインがおしゃれで、『こんなお墓なら入りたい』というくらい素敵なんですよ」

恵子さんの実家では、両親が20年ほど前に、郷里である京都の寺から埼玉県の民間霊園へお墓を移していた。お墓は結婚した兄が継いでいるので、そこへ自分も入るという道もある。

「でも年月が経てば、お参りに来るのは私とは遠い親戚や子孫になるわけでしょう。お義理で偲ばれて、『この恵子って人は誰?』なんて言われるのは嫌だなあって」

その点、バラ園の共同墓では生前に契約した仲間の名前と生年月日がクリスタルボードに刻まれている。毎年6月には追悼会が開かれるが、参加者は黒い服も着ず、ワイン片手に亡き人の思い出話に花を咲かせるという。

「私は、生きることの続きに死があると思っています。同じ価値観を持ち、楽しくおしゃべりした人たちと一緒のお墓に入ると思うと、死ぬことも寂しくないじゃないですか」