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コロナ禍で特に甚大な影響を被ったのは、非正規労働者や自営業者だろう。職場の都合で仕事がなくなったり、営業自粛を求められたりして、収入がなくなった人が大勢いる。彼らはその日々をどう生きてきたのか。生活者のリアルな声を取材した

一家6人、収入は夫の年金だけ

東京都在住の優里さん(65歳・仮名)は、大家族でコロナの危機に直面している。家族構成はイベント会場の設営の仕事をしている夫と、36歳の長男、31歳の長女、長女の夫、そして長女夫妻のもとに6月に誕生したばかりの孫。さらに犬のミニチュアダックスフント。ひとつ屋根の下に、6人と1匹で暮らしている。コロナの影響が押し寄せてきたのは2月中旬。夫の仕事にキャンセルが出た。

「3月に予定していた仕事はすべて中止になりました。すでに動いていたものについては4月末に半額だけ入金がありましたが、それ以降、収入は一切ありません」

優里さんは長年ライター業をしていたが、5年前からは、学習塾でテストの試験官や採点のアルバイトをしている。しかし、緊急事態宣言後、塾は休みになったため仕事はゼロになった。

「今の収入は夫の年金だけ。2ヵ月に一度、10万円ほど入ってきます。それから、国からの特別定額給付金は、夫と私のふたり分で20万円。また、コロナの影響で休業した人は社会福祉協議会から20万円を借りられるので、それにも申請して入金がありました。子どもたちから入る生活費はありますが、あまり頼れなくて……」

実は長男には離婚歴があり、別れた妻に子どもの養育費を払っている。長女の夫は体調不良で数ヵ月前まで病院に通っていた。今は仕事をしているが、収入にゆとりがあるわけではない。頼みだった長女は現在育休中で、職場復帰は来年4月の予定だ。

「一番の出費は、家賃の13万5000円です。3階建ての一軒家で6人が住める広さですけど、築40年のボロ家。都内にしては安価という点は助かっています。次に多い支出は、食費。週に1回スーパーに行って、カードで買っています」

食材は1週間で使い切らず、10日はもつように献立を考える。お米には、もち麦を入れてかさを増やす。それでも、月に15キロの白米が必要だ。そうやって努力を重ね、月末に、銀行口座からカードの利用額が無事に引き落とされるとホッとする。残高不足で口座振替がされないと、カードの使用を止められるからだ。5月以降、お金のやりくりに必死。そんな妻を見て、夫も動いた。