家電はなんでもふたつずつ揃えて
さらに、同居による弊害は次々と生じた。
「4人いれば、トイレやテレビは争奪戦になりますよね。冷凍庫を義母の買ってきた大きなアイスクリームの箱で占拠されるのは迷惑でしたし、ご飯の炊き加減に文句をつけられるのも腹が立った。
そして、今でも忘れられないことが……。義母が猫用の敷物を洗濯機に入れてしまい、ほかの洗濯物が毛だらけになってしまって。『次からは気をつけてください』とやんわり伝えたつもりだったのですが義母は怒り心頭。その足で洗濯機を買いに走り、これみよがしに中庭に設置されてしまいました」
以来、問題が生じたら夫を介して伝えてもらうことにした。
「夫が言えば険悪な空気にはならないんです。夫から両親へのプレゼントとして家電を購入し、その結果、冷蔵庫と炊飯器は2つずつ、テレビは1人1台に。トイレも2階に増設することにしました。物だらけの家になってしまいましたが、揉めるよりはマシですし」
小さなストレスは侮れないと奥田さんは言う。
「私、同居から5年ほどで、疲労とストレスで倒れて入院したんです。以降、いい嫁ぶるのはやめました。無理して義父母の早寝早起きに合わせないことにして、しばらく控えていた仕事も再開したんです。友人にランチに誘われたとき、思い切って義父母に外出することを伝えたら、二人でコンビニのお弁当を買って済ませてくれるようになりました。友人に愚痴を聞いてもらう時間もできて、息抜きが上手になったかもしれません」
日々の暮らしは楽になったが、胸に秘めていた不満もあった。
「家賃、光熱費、食費などが嵩み、貯金がまったくできませんでした。もしかしたら、これが一番大きなストレスだったかもしれません」
こればかりは解決法がなさそうだ、と思いきや。
「7年前に義母が、翌年に義父ががんで他界したあと、通帳を見ると、震災時の保険金がほとんど手つかずで遺されていました。夫が『君へのご褒美だね』と言ってくれたのが嬉しかったです」
期せずして始まる親との同居は試練の連続かもしれない。けれど運命を受け止めて冷静になれば、何をすべきか自ずと見えてくる。3人の経験者が身をもって教えてくれた。