《チョコレートドーナツ》

“愛と自由への希求”を全米ヒットナンバーにのせて

アメリカの映画祭で激賞されるも、日本公開時は当初1 館のみの上映。ところが公開されるや、クチコミで一気にロングランヒットとなった映画『チョコレートドーナツ』が、世界で初めて舞台化される。育児放棄された障害児をゲイの男性2 人が育てたという実話をもとにした本作で演出を手掛けるのは、これまでさまざまな愛のカタチを描いてきた宮本亞門。メインとなるゲイカップルに東山紀之と谷原章介が挑むのも話題だ。

舞台は1979年のカリフォルニア。シンガーになるのを夢見てショーパブのダンサーとして暮らすルディは、ある日、地方検事のポールと出会う。彼もまた、仕事で“正義”を追求しながら、ゲイであることを隠している生活に割り切れなさを感じていた。そんな彼らの前に、ダウン症のある少年マルコが現れる。母親が薬物所持で逮捕されたのを機に、一緒に暮らすことになった3人。愛情に包まれ、まるで本当の親子のように過ごしていた彼らだったが、偶然、ポールがゲイであることが職場で知られてしまい……。

東山紀之が演じるのは、ショーパブのダンサー・ルディ。運命の人ポールや少年マルコと出会ったことで変わっていくさまを、芝居だけでなく歌とダンスでも表現するという。そのルディと共にマルコを育てるなかで、自身の“正義”に向き合うことになるポール役には谷原章介。端正なたたずまいが魅力の谷原だが、悩み惑うポール役を通して、新しい表情を見せてくれるに違いない。また少年マルコ役として、実際にダウン症のある高橋永と丹下開登がダブルキャストで出演。演劇の新たな可能性を示してくれるのも見どころだ。

宮本演出らしく、人間ドラマをベースに、70年代の全米ヒットナンバーをちりばめて構成する本作。広く人間の根本である“愛と自由への希求”を、改めて問う舞台である。

チョコレートドーナツ

12月7~30日/東京・PARCO劇場
原作/トラヴィス・ファイン、ジョージ・アーサー・ブルーム
(トラヴィス・ファイン監督映画『チョコレートドーナツ(原題:ANY DAY NOW)』より)
翻案・脚本/谷賢一
訳詞/及川眠子
演出/宮本亞門
出演/東山紀之、谷原章介、堀部圭亮、八十田勇一、妃海風、まりゑ、高橋永・丹下開登(Wキャスト)、モロ師岡、高畑淳子ほか
☎03・3477・5858(パルコステージ) ※長野、仙台、大阪、愛知公演あり

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください