『放浪記』より。森光子演じる林芙美子と、黒柳徹子が演じる日夏京子(提供/東宝演劇部)
〈『徹子の部屋』で紹介!〉『放浪記』の主演2000回という偉業を達成した大女優・森光子さん(1920 - 2012)。「日本のお母さん」として日本中に愛された。生誕100年となる今年5月、記念出版として書籍『森光子 百歳の放浪記』(著者:川良浩和)を刊行。浜木綿子さんや黒柳徹子さん、奈良岡朋子さん、石井ふく子さん、東山紀之さん、堂本光一さんといった周囲の人々の新証言によって、波乱の生涯と、舞台に立とうとし続けた大女優の雄姿を描いた。そこで、黒柳徹子さんの証言から森さんの実像をみてみようーー

徹子ちゃんは裏切らない

——昭和40年代、同じ吉田名保美事務所に所属した森光子と黒柳徹子は舞台共演を重ね、波長のあった二人は姉妹のように付き合うことになる。セリフ覚えの早い二人には割り当てが多く、苦楽をともにした。

テレビがはじまった時、私はNHKで養成を受けました。森繁さんや森光子さんはすでに映画や舞台では両巨頭で、沢村貞子さんもいらっしゃった。皆さんすごい先輩でしたけど、テレビっていう新しいものが始まった時は、みんな一緒に心を合わせてやらないとうまくいかないっていうのは分かっていたので、ヨーイ・ドンという感じです。特に森さんは仲良くしてくださったので、それから舞台も一緒にやりました。

【アーカイブ写真】舞台上の森光子さんと黒柳徹子さん

——後年、黒柳は森にあてて毎日のようにFAXを送った。伝えたいことが多すぎて、縦書きで書いていたものがやがて余白まで渦を巻いて綴られた。

女学生の上級生と下級生のようでした。いつも芝居の時なんかでも、楽屋で一緒にご飯を食べて、昼と夜の間、毎日毎日森さんのところでご馳走になりながらね。

いつか私がハッサクをすごく食べていたんです。森さんの楽屋でね。「美味しい、私ハッサク協会の人と結婚しようかな」って言って。そしたら森さんが「徹子ちゃん、ハッサク協会ってのはないんじゃない? 柑橘類協会とかいうんじゃないですか」というの。その森さんの諫め方が凄くおかしくてね。

それから私が雑誌を見ていたら、毛がいっぱい生えている人と、つるつるの頭の同じ人が一緒に写真が出ていまして「こういう毛生え薬って詐欺に決まってるじゃない」って言ったら、森さんが「徹子ちゃん、それカツラのコマーシャルなの」って。森さんすごく目敏かったですね。

パンダが来た時、私上野動物園と親しかったのでね。パンダを日本で有名にさせたってこともあって。まだみんなパンダを知らなくて話も聞いてくれなかった頃に、森さんだけは興味をもって「見たい」と仰って。私が一番に上野にお連れして、カンカンをお見せしました。後になっても、「私たちパンダ見たわよね」ってずっと仰っていました。