光浦靖子さん(右)と辛酸なめ子さん(左)(撮影:藤澤靖子)
お笑い、そして文筆の世界でそれぞれ活躍し、これまで仕事を第一に考えてきたというお二人。読者から寄せられた結婚に対するホンネの数々を眺めながら、シングルならではの不安や楽しさ、将来設計にまで話はおよび──。対談の後編をお送りします(構成=平林理恵 撮影=藤澤靖子)
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<前編よりつづく

ひとりだからこそ生きがいを持って

辛酸 光浦さんは、結婚したいと考えていますか?

光浦 40代の初め頃、結婚したかった。子供のことを考え、そしてその頃に仕事が減り始めたから。精神的に一番危うい時期でしたね。

辛酸 私は最初からそんなに願望がなかったような気が。でも、妄想はします。もしも自分が違う人生を歩んでいたら、越谷あたりで公務員の夫と一緒に暮らしているのかな、とかって。

光浦 公園デビュー下手そう! でもブログとかやってそう。(笑)

辛酸 たまに想像するくらいですけど、別の選択をした自分がどこかパラレルワールドに生きているかもしれない……と思って、その結婚生活に思いを馳せるのが好きなんです。

光浦 私が一時期結婚したかったのは、仕事が減ったことへの「逃げ」でもあったから。自分でもずるいと思うんですけど、世間が納得してくれて、自分も納得できる仕事の辞め方は、“寿退社”しかなかった。

辛酸 仕事が減らなかったら、結婚したいと思わなかったですか?

光浦 そこまで思わなかったかも。だから、このシングルの方の「自分のためにしか生きていない」(50歳・会社員)という回答が胸に響きます。

辛酸 自分の好きな仕事をやるだけでは虚しい、と。

光浦 仕事でイヤな思いをして、胃に穴があきそうな状態でも現場に行かなきゃいけないとき、子供のため、夫のためという、いい意味での“手かせ足かせ”があるから人は頑張れるのかな、と思ったことがあったんです。自分より大事な、頑張るパワーになるモノ。

辛酸 世の中の人が光浦さんの仕事を見て楽しむということは、モチベーションにはなりませんか?

光浦 ああ……そんなふうに一段上から見ることは、当時はできなかったですねえ。