ピンチが安定して続いている

渡辺 家にいると、毎日、ごはんを作ることになって、大変だったんじゃない?

小川 余分な仕事が増えたなんて、まったく思わなかった。外に食事にも行けないので、せめて家で食べるごはんを楽しもうと思って。品数を一品増やすとか、見た目を彩りよく工夫したりとかね。料理本を引っ張り出してきたり、ネットで検索したり、自分の勉強にもなる。それに、そういうことをしていないと、私もやることがないもの。

渡辺 うちも料理はよくやったね。妻はもちろん、俺も息子たちも、みんな作るのが好きなのよ。で、当番制で作る。俺や息子が作るのはパスタばっかりだけど。(笑)

小川 いいわねえ。羨ましい。

二人の対談が掲載された『婦人公論』11月24日号

渡辺 これもまたライバル意識が出てきて、「もっとこうしたら」「俺ならこうする」とか言いながら。「食べること」がいつも以上に大事に思えた。

小川 ほんとね。それと、郁恵さんは菜園をやってるよね!

渡辺 10年以上前から、神奈川の厚木に菜園を借りてて、お仲間と野菜を作ってる。これが楽しくて、ストレス解消にもなってたんだね。週に一度、通っていたのが、コロナでなかなか行けなくなったのがさみしそうだった。

小川 私もね、ささやかながら家庭菜園を始めたのよ。バジル、パセリ、シソくらいだけど。でね、料理に使っては、家族に「これ、庭でとれたやつ」「美味しいでしょ、ね?」って何回も聞くの。「へえ」「ほう」で終わるときもあるけれど、「ようわからんけど、うん、うまい、うまい」とノッてくれると嬉しい。やっぱりリアクションを求めてるのね。そんなだから、一緒にいる時間が長くて疲れた、ということはあまりなかったかな。

渡辺 うちなんて衝突はしょっちゅうだからね。もともと妻とはよくケンカしてるから、コロナのせいなのかどうか(笑)。まあ、顔を突き合わせていると折々にぶつかるよね。彼女に言われて愕然としたのよ。「お父さん、三十何年、ケンカの原因はいつも食べ物のことよ」。

小川 あ~っはっはっは。

渡辺 ステイホーム中に、デリバリーを頼んでみようということになったの。俺がポルチーニ茸のパスタかラザニアか迷っていたら、妻が「両方頼んで分け合おうよ」と。いざ、料理が届いたら、一口ラザニアを食べた妻が、「美味しい! 私これでいい」と、全部食べちゃった。「いい加減にしろ。ひとりで全部食うやつがあるか!」で、大ゲンカ。

小川 やだ、二人ともかわいい。

渡辺 「人間が小さいわよ」と言われた(笑)。まあ、つきあっているときからケンカや言い合いはよくしていたし。30年以上、ピンチな状態が安定して続いているというか。

小川 ピンチがふつう。(笑)

渡辺 そう。息子たちも「またやってるよ」「くっだらねえ」なんて言いながら見てる。