中村 大衆が求めるスター像は、時代とともに変化するものなんでしょうか。

秋元 僕は常々申し上げているんですが、変わらないと思うんですよね。実は何も変わっていない。

中村 そうなんですか?

秋元 そうです。62歳の僕がなぜ10代の詞を書けるのかとよく訊かれますけれど、詞を書く時には、自分が高校生だった頃のことを思い出します。あの時こんなことで悩んだな、悔しかったな、切なかったなっていうことを。それは今の高校生だって変わらない。

考えるのは、昔と今でツールがどう変わったかです。中学生の時に、僕らの時代はラブレターを書いて返事が来るのをポストの前で待ってたけれど、今の子たちにとってはそれがLINEやインスタのDM(ダイレクトメッセージ)かもしれない。

だけど、返事がほしい、好きな人からのリアクションを待ちたいっていう気持ちは変わらない。僕が1993年に作ったドラマ主題歌「ポケベルが鳴らなくて」というのも、あの時代を反映した恋人同士の心理でした。手段が変わっているだけ。

中村 ポケベル、懐かしいですね。

秋元 よくケーキにたとえるんです。僕らの時代は、苺のショートケーキが王様で、そのうち苺が輸入物のフルーツに変わり、チョコレートケーキやチーズケーキ、健康志向でキャロットやパンプキンがブームになったり。でも、ベースのスポンジ部分は変わらない。じゃあこの時代のデコレーションは何なんだろう、ってことを考えて歌を作ります。

中村 ご自身の創作活動にどんなふうに反映されていますか?

秋元 僕たちはやはりフォークソングの影響を受けていますね。たとえば、「あの素晴しい愛をもう一度」っていうのは良かったな、あんな曲が朝ドラで流れたら、みんなが口ずさむだろうな、と思って作ったのが「365日の紙飛行機」。ディスコブームの時にみんなが同じ振りで踊っていたことを思い出して作ったのが、「恋するフォーチュンクッキー」です。

筒美先生や阿久先生の影響かもしれませんが、変わらないものを歌に込めたいという思いが強くて、普遍的なものに対する憧れやリスペクトがありますね。