「神様から指差された人」
中村 『ザ・ベストテン』などの番組を手がけ、AKB48をメインストリームに押し上げ、常に最前線におられる秋元さんに伺いたいのですが、スターとはいったいどんな存在なんでしょうか。
秋元 やっぱり、スターっていうのは「神様から指差された人」ですね。運命なんです、きっと。運命だから、抗えない。そしていろんな浮き沈みがあったとしても、24時間存在感がある人ですね。
日本を代表する歌姫、美空ひばりさんはどこにいても何をしていても、立ち居振舞いそのものが《スター》。たとえば、ひばりさんがどこかで食事をなさって、支払いの時に伝票の額にかかわらず「美空ひばり」と書いてあるご祝儀袋を、伝票も見ずに渡したと。これ、本当かどうかわからないんです。でも、こういう話を聞くと、さもありなんと思いませんか?
中村 思わず頷いちゃいます。(笑)
秋元 ひばりさんが闘病中、どうしても夜中にお腹が空いて、タクシーに乗ってこっそりラーメンを食べに行った。ところがタクシーの中で財布を持ってないことに気づき、「ごめんなさい、私、美空ひばりなの」と言っても信じてもらえず、その場で「悲しい酒」を歌った、という話とか。本当かなって思いますが、でも何かこう、信じたい気がしてしまう。
世の中の人たちは、こういう話の数々に夢を見るわけです。スターたちは24時間、そこにカメラがあるような生き方をしている。勝新太郎さんや藤山寛美さんもそう。まつわる伝説をふくめて、浮世離れしているというか、みなさん圧倒的にスケール感が違います。
もしかすると今のスターと比べても桁違いかもしれません。僕のように昭和の時代から芸能界を見ていると、やっぱりスターといわれる人はオーラがありますね。