厄介の種はもともとあったのかもしれない。そこに新型コロナウイルス感染症の影響で、会うことのできない状況が、心配やトラブル、身内の問題をより面倒にする。家族の溝は深まるばかり。中村さん(仮名)の場合、叔母との関係に悩んでいて……(取材・文=樋田敦子)
叔母に伝わらないもどかしさ
「なまじ血縁関係があるだけに、言いたいことも言えず、電話で話すたびに苛立ってしまう。やれやれと思う日々が半年続いています」
都内で医療関係の仕事をしている中村明子さん(70歳・仮名=以下同)のイライラの原因は、北陸地方の実家の近所に住む叔母(87歳)にある。発端は、中村さんの母(94歳)が昨年の8月から施設に入所して、実家が空き家状態になってしまったことだった。住む人のいない家の《風通し》をめぐっては、母の妹に当たる叔母といつもひと悶着起きる。
最後に実家に帰省したのは2月の上旬。またすぐに来るつもりで、コタツや暖房器具など冬支度のままにしてきたら、4月に緊急事態宣言が出され、帰れなくなった。
「母とは面会もできない日々が続いています。施設では、東京はもとより、他府県から来る家族との面会は禁止。それまでは、役所での手続きもあって、最低でも月1回、2ヵ月に3回程度は顔を見に来ていました。その帰りに実家に行って掃除をし、家に風を通すのがルーティンになっていたのですが……」