「早めに認知症だとわかってよかったと思うんですよ。だって、それならそれで準備できることがあるから」

蛭子 環境が変わると、ちょっと混乱しちゃうんだよね。できなくなった仕事もあるけど、主治医からも仕事は続けたほうがいいとアドバイスを受けていて。確かにいろんな人に会ったり、体験をしたりするのって刺激的なんですよね。

マネージャーは、幻視を漫画にしたらどうかと言ってくれるんだけど、なんか面倒くさくて。漫画って構成とか考えなくちゃいけないし、集中力も必要だし。その気力がなくなってきたのは年齢のせいなのか、認知症のせいなのかわからないけど、テレビに出演したほうが手っ取り早く稼げるからね。(笑)

俺、貯金ってほとんどないんですよ。いや、本当に。若いときからのギャンブルで、たぶん1億円くらい負けてきたから。でももうギャンブルは……。あれっ? なんで俺は健康マージャンまで止めちゃったのかな?

マネ 新型コロナウイルスの影響で3密を避けるためです。

蛭子 あ、そっか。とにかく今は女房と過ごす時間のほうが大事になりました。これからは競艇も控えて、お金に困らないよう心がけないと。彼女のために一生働いて稼ぎ続けたいというのもあって、お金にはめちゃくちゃ執着しています。(笑)
 

蛭子さんは1972年に結婚。同年に長女、2年後に長男に恵まれました。とても愛妻家だっただけに、2001年に妻を亡くしたあとは寂しくてたまらなかったのだとか。そこで女性誌が主催するお見合いパーティに参加。「蛭子さんと結婚したい人」という呼びかけに応募してきた6人の女性のなかから気の合った、19歳年下の現在の夫人と3年の交際期間を経て07年に再婚しました。

蛭子 早めに認知症だとわかってよかったと思うんですよ。だって、それならそれで準備できることがあるから。俺は先日、「家族信託」という仕組みを使って、マンションの名義を女房に移しました。なんでだっけな?

マネ 原則として判断能力がないとみなされると、銀行口座が凍結されたり、不動産手続きを行うことができなくなったりしてしまうからですね。奥様が受託者になることによって、将来、蛭子さんが施設に入って収入が途絶えてしまった場合に、奥様の一存で部屋を貸したり、売却したりすることができるようになりました。

蛭子 娘や息子との関係も良好ではあるんだけど、子どもに介護してくれとは言えませんね。俺の場合、子育ては前の奥さんに任せきりで、父親らしいことしてこなかったから、可哀想なことしたなと思ってて。