歯止めかからぬ少子化

日本では少子化が大きな問題となっている。出生数は1949年の第一次ベビーブームのピークに約269万人、そして、第二次ベビーブームが73年の約209万人、それ以降は徐々に減ってきている。

2007年、少子化対策担当大臣というポストも創設されたが、少子化にあまり歯止めはかかっていない。経済成長が頭打ちとなり、社会が成熟するにつれて、晩婚化や非婚化など個人の価値観は多様化してきた。昨今では経済的な格差の問題も取りざたされている。誰もが子どもを2人も3人も産んで育てられる時代ではなくなっているのだ。

こうした「出産をめぐる厳しい社会背景」がありながら、福田病院はなんと、10年連続日本一、赤ちゃんが産まれる病院となっているのである。しかも先々を見据え、女性の産前・産後、さらに更年期のケアにまで力を入れている。これはなんとしても、病院に話を聞かなければと思った。

福田病院の全景

通常の「病院」のイメージからほど遠い

熊本城の城下町として発展してきた熊本市、その繁華街から路面電車で五駅、15分足らずで行ける場所に、医療法人社団愛育会・福田病院はある。熊本中央郵便局のすぐ隣、国立病院機構熊本医療センターからもほど近い。

広い敷地に、大きくすっくとそびえ立つ白と薄いグリーンの10階建ての本館。熊本の青い空に映えていて目立つのだが、パステル調の建物なので威圧感がない。本館入り口上部の壁には、110年前の創立時の看板―風格ある「福田病院」のロゴを復刻したもの―が上品にはめ込まれている。

広いエントランスロビーの右手に自動ドアがあり、総合案内のあるホールへと出る。三階まで吹き抜けになっているゆったりしたホールは、モダンなシャンデリアが下がった開放的な空間で、通常の「病院」のイメージからほど遠い。建物内部は明るく、きつい色は一切使っていないから、まるで落ち着いたリゾートホテルのようだ。

福田病院では、近年、年間3400人前後の赤ちゃんが産まれている。関連クリニック2軒を合わせると、6000人が誕生しているのだ(2017年取材当時)。

熊本県の出生数は2015年で1万6000人弱だ。ということは、県内で産まれる赤ちゃんの約3分の1をカバーしていることになる。こうやって計算してみると、福田病院の人気ぶりが改めてわかる。