「ちゃんと監督しないと、うちの子が落ちこぼれる」

重松 今回、編集部で読者に学校教育に対する不安や悩みについてアンケートをとったのですが、こんな回答がありました。「中学1年生の子は、入学したばかりの学校からまったく習っていない理科の課題を山ほど出され、課題提出の締め切りに間に合うよう親も一緒に考えるなどして、家庭内の負担はハンパなかった」。

尾木 本来、教師がやるべきことが家庭に丸投げされたのです。しかも、文部科学省からは、休校中の家庭学習にも成績をつけていいことになった。

村上 私の仕事がない週末に、朝から夜までずっと、娘と一緒にプリントや、課題の番組視聴。親がいない平日は、好きなことをして過ごしていたようで、しわ寄せが週末にきていました。

尾木 親は焦りますよね。「私がちゃんと監督しないと、うちの子が落ちこぼれる」という不安からガンガン勉強させる。次第に言葉もキツくなって――。お母さんは子どもをケアする立場なのに、先生と同じように目を光らせている。親子関係は崩れ、子どもの逃げ場がなくなってしまいます。もちろん、この状況をプラスに変え、親子のいい関係を築いた家庭もたくさんあったことでしょうが。

村上 「プリントを読んでください」という一方通行で、親への負担は大きかったと感じています。それで評価されてしまうとなれば、なおさら。

尾木 そして、学校再開の6月はじめからはテスト漬け。家での学習の成果が成績に反映され、中3だとそれが高校受験の内申書にまで響いてくる制度。成績評価は本来なら、授業と一体であるべきです。自分が直接教えてもいない内容を評価する権限は、教師にはないはずなのに。

重松 文科省の特例通知で、認められたんですね。

村上 小学生は、中学受験をするときに内申点が必要な人は少数ですが、中学生の高校受験には内申点が重要ですから、プレッシャーが大きかったと想像します。

重松 読者へのアンケートでは、子どもたちの受験についての不安も多く聞かれました。

尾木 約3ヵ月の休校期間があったにもかかわらず、高校入試も大学入試の共通テストも例年通りの日程で行われる。学ぶべき範囲の履修が追いつかず、詰め込み授業で子どもたちが疲弊することが懸念されています。

重松 入り口が遅れたのに、出口は変わらずなんですね。

村上 家庭、地域、学校による学ぶ機会の格差も出てきています。