会えない友だちと文通でつながる
重松 休校中、里和さんの娘さんはどう過ごしていましたか?
村上 最初は「好きなことをやろう」と、手芸や工作をしていました。でも2週間くらいすると、急に何もする気が起きなくなったようで、ボンヤリ。聞けば、「友だちと会えないのがつらい」と。親が仕事でいない日中はずっと誰とも会話しませんしね。
重松 うわっ、それはしんどい。
村上 そこで、お友だちとの文通を始めました。手紙に自作のアクセサリーを添えて、散歩がてら、その子の家のポストに入れに行く。返事がくると嬉しそうで。そのうち、「お母さんの携帯電話で、お友だちとテレビ電話がしたい」と言われ、母親同士で相談し、娘たちがお喋りできる時間をつくったんです。すると、キャーキャー、30分と決めていたのに話が止まらない。子どもにとって、人とつながることがいかに大事なのかと強く思いましたね。
尾木 そうなんですよね。都内のある公立小学校での話ですが、学校が再開した6月、登校してきた子どもたちの顔があまりにもこわばっているのに校長先生は衝撃を受けたと。職員会議で話し合い、勉強よりも子どもたちのメンタルケアのほうが大事だとなったけれど、抱きしめたり、握手したりができないのです。
重松 そうか、密着禁止、ソーシャルディスタンスだから……。
尾木 それで、「LOVOT(ラボット)」という家族型ロボットを各学年に1台ずつ、実験的に導入することにしたんです。センサーが人の動きや音を感知し、記憶。生きているかのように反応する。まるでペットみたいなロボットなんですね。授業中も、キュン、キュウ~ンと言いながら教室内を動きまわっている。
すると、子どもたちがイキイキしてきた。クラスで相談して名前をつけたり、平等に触れることができるようルールを決めたり、みんなでどんどん話し合ってね。やがて、クラスの中が和やかになり、不登校の子も学校に行くようになった。
村上 ラボットくんの存在が、子どもたちの硬くなった心をほぐしてくれたんですね。セラピーにもなっているのでしょう。