大学のリモート授業に「放課後」をつくる
重松 小中高では通常授業に戻った一方で、大学は今もオンライン授業が続いていて、図書館などの施設が使えず、通常の大学生活が戻っていないところも。
尾木 ほとんどの大学は、後期からオンラインと対面授業との併用に切り替えているでしょう?
重松 僕の担当している授業は、対面授業はゼミだけで、しかも月に1回のみ。さらに、その場合も密を避けるため、受講者の3倍の定員が入る教室です。教室の数が少ないので割り振りが大変だと聞きました。
尾木 法政大学では、9月にあった私が担当した新入生歓迎講演会もオンラインでした。そのときに「君たちのいちばんの悩みは何ですか」と質問したところ、圧倒的に多かったのが、人間関係、友だちができないのがつらい、という悩みでした。新入生のサークル勧誘もすべてオンラインですから。
重松 先ほどの里和さんの娘さんの話にしても、ラボットと子どもたちのことにしてもそうですが、人が誰かとつながり、関わりあうことはとても大事ですよね。今までは授業が終わると、友だちとワイワイ話しながら帰ったりしてたでしょ。
村上 それが楽しいんです。
重松 ところが、オンラインの授業は、画面をオフにすれば、プチッと切れる。断絶感があるんです。だから僕のゼミは「放課後をつくってやりたい」と思って、オンラインでのゼミが終わったあと、僕だけ抜けて学生だけで語りあえるようにしたんです。そうしたら、ずうっと喋っていたみたいで、夜中の12時頃、「先生も入りませんか」とLINEメッセージがきた。まだ続いていたのかよ、と。(笑)
尾木 そういったなかから刺激を受けて、学んでいくんですよね。学生生活は授業や講義だけじゃない。OECD(経済協力開発機構)が「エデュケーション2030」という報告書の中で、「生き延びる力」について示しています。これからの時代は、IQ(Intelligence Quotient:知能指数)ではなく、HQ(Humanity Quotient:人間性知能)がカギになるんですね。
重松 AIと人間は対立するものではなくて、共存もできる。そのためにHQ、人間力が問われるんですね。そして、HQは他者との関わりあいで培われていくもの。
尾木 そのとおりだと思います。
*この鼎談は9月29日に収録しました。
<後編につづく>