小俣幼児生活団(栃木県足利市)の主任保育士として、93歳の今も元気に働いている大川繁子さん
栃木県足利市にある小俣幼児生活団は、ユニークな保育園として知られる。園舎は国登録有形文化財。子どもの自由に生きる力と責任を培う保育方針を求め、園児は県内外から集まる。特筆すべきは、ここの主任保育士・大川繁子さんが93歳でいまだ現役であること。軽い足取りで、楽しそうに仕事に向き合うその原動力は何か聞いた(構成=山田真理 撮影=本社写真部)

退院当日から仕事に復帰

今日は小雨模様で外に出られないようでしたけど、子どもたちは園舎で元気に遊んでいたでしょう。ここは、姑が自宅を使って立ち上げた保育園。私は保育士として60年近くにわたって勤めてきました。

といっても、いまの団長(以下、園長)は私の次男。自分の家でやっている仕事だから、この年になってもクビにならずにきたんでしょうね(笑)。この9月で93歳になりましたし、きっと周囲には迷惑をかけていると思いますよ。みんなで私を持ち上げてくれるから、なんとか仕事を続けられています。

こんなおばあちゃん先生がいることも珍しいでしょうけど、小俣幼児生活団は一般の保育園のイメージとは少し違います。古くから織物業や糸商を営んでいた大川家の敷地は、裏山も含めて約3000坪。ザリガニのいる池もあれば梅林もある園庭に、子どもが立ち入り禁止の場所はありませんし、築170年の母屋も園舎です。

保育方針が独特、とマスコミの方もずいぶんいらっしゃいました。今年1月、取材を受けていたら、園舎の玄関ですべって大腿骨を折ってしまって。入院時は車椅子で、この先どうなるかと心配でした。でも病院の先生曰く「この年齢にしては驚異的な回復力」とかで、リハビリで廊下を往復していたら、隣の病室の人に「もう歩いているの!」とびっくりされたくらい(笑)。おかげさまで退院当日から仕事にも復帰できました。

最近は園長が車で送り迎えしてくれますが、入院するまでは自宅からリュックサックを背負って歩いて通っていました。片道15分くらい。園は少し小高い場所にありますし、古い建物は段差も多くてまったくバリアフリーではないから、かえって足腰にはいいかもしれませんね。つまずいたりしてケガはしょっちゅうですが。