生きていく力を育むために
園の一番の転換期は、大学の工学部を出たばかりの次男が、思いがけず2代目園長に指名されたことでしょうね。保育の素人だけに、当時は当たり前だった「ねばならぬ」の考え方がおかしいと思ったみたい。
彼なりに幼児教育の勉強を重ねて、モンテッソーリ教育やアドラー心理学などの理論を取り入れるようになりました。難しいことはわからないけれど、子どもが持っている「自由に生きる力」と、それにともなう「責任感」を育てるのが、園長の方針です。
たとえば給食はバイキング方式。食べたい物も、量も子ども自身が決めます。もしほかにやりたいことがあれば、給食をパスしてもかまわない。もちろん後から食べられるよう残してはおきますが、食べ損ねることもあるわけです。
要領のいい子は、先生に「取っておいてね」と頼みますし、空腹を味わって次から遅れないようにする子も。子どもでも、自分の頭で考え、対策を身につけるのが大切なんです。いつの時代もこの生きていく力は欠かせないと思いますね。
0歳児から4歳児まで、クラスみんなで同じことをする時間はありません。5歳児も、1日に1時間だけ。小学校に進んで周りと違いすぎると、びっくりしちゃいますからね。ルールも課題も、毎年子どもたちが話し合って決めます。
こんな環境や方針を面白がって、近隣だけでなく、遠方から子どもを通わせてくださるご家庭もあります。送り出した園児たちは、2800人を超えました。2代、3代にわたり通ってくれるご家庭もあって、本当に励みになります。