妻よりも嫁として忙しかった人生

20年ほど前に夫を亡くしてから「おひとりさま」暮らしを続けていますが、だから生きていられるみたい(笑)。もともと家事は苦手でゴミ屋敷みたいに散らかっているし、食事も栄養士さんが作ってくれた給食を家でおいしくいただく生活。でも、寝る前に数独をしたり、ゲーム機でブロックゲームに熱中したり、気ままでいいですよ。こんな暮らし、夫がいたらできませんものね。(笑)

夫は町でも評判の良い人だったけれど、姑に呼ばれるとまず「どうもすいません!」って答えちゃうような人でした。私自身、「大川邦之の妻」より、「大川ナミの嫁」としての人生に忙しかった気がします。

姑が寝たきりになって亡くなるまでの7年間、仕事と介護を並行した時期もありました。園が終わると夫の車で家まで帰り、食事の支度をしたら夫の車で姑の家に行って、朝6時まで介護をするの。

だから姑が亡くなって、「これから2人で旅行にでも行こうか」と夫に言われたとき、うーん、困ったというか(笑)。夫とは不仲ではなかったけれど、パートナーという関係になれなかったことについては、少し後悔がありますね。

嫁や妻としての人生を終え、一人気ままに好きな仕事を続けられるいまは本当に幸せです。それにいまが幸せだと、過去の苦労も「あの経験があったから、いまの自分がある」と思えるでしょ。だいたい私たち戦争経験者は、戦時下を思えば、多少のことでびっくりしません。つらいときも生きていさえすれば、最後にこうして楽しい日々を送れるのだと思います。

93歳になっても「自分はまだまだ」という気持ちで、毎日が勉強です。明日はどんなことをしよう、何を新しく学べるかしら、と思うとワクワクします。好奇心と探究心を忘れずに、悔いのない人生を送りたいですね。