「今、子どもたち、親御さんや先生方も、厳しい状況下、失うものはたくさんあるかもしれないけれど、一方で、何かを得られるかもしれない。そのことを信じたいんですよ。」(重松さん)

声高な議論は心に届かない

重松 今回のウイルスの影響でラジオが復権していく。僕はそれ、わかる気がします。コロナ前から僕が感じていたのが、言葉というものの大切さ。SNSの時代になってから、尖った言葉が人を追い詰めたりすることがよくあるでしょう?

さらにコロナでみんな気持ちがささくれだっている。そういうとき、自分に語りかけてくるようなラジオの言葉は、実に心地いいんです。尾木先生の場合も、《尾木ママ》の語り口があるから、より説得力も生まれる。

尾木 そんなに変かしら~。(笑)

重松 いえいえ(笑)。教育をめぐる議論は、声高だったり、激しくなりやすい。ギスギスしがちな今の時代だから、なおのこと学校や教育について、尾木先生のその語り口で語ってほしいんです。

尾木 じゃあ、これからもママでいきますね。(笑)

重松 コロナ禍でみんな大変な思いをしています。ただ、そこで見えてきたものもある。ある学生は、自分の出身地が嫌いで東京に出てきたけれど、コロナで長く実家に帰っていたら、故郷のよさに気づいた。就活も地元ですると言っています。

今、子どもたち、親御さんや先生方も、厳しい状況下、失うものはたくさんあるかもしれないけれど、一方で、何かを得られるかもしれない。そのことを信じたいんですよ。

尾木 僕は子どもたちによくこう言うんですよ。「地球上の約78億人が同時にこんな辛苦に遭うなんて経験は人類史上初。大人が誰も経験したことがないことを君たちは今、経験しながら生き抜こうとしている。これだけでもすごいこと、自信をもっていいよ」と。

村上 本当にそう思います。