仁 去年、台湾で粘土作品の個展をやったんですが、この20年、自分の作品は芸能人の嗜みという捉え方しかしてもらえないだろう、と思っていて。値段もつけず、一切作品を売らないできてしまったんです。そしたら、僕にはアーティストとしての価値がないことになるらしくて。
清水 価値はなにで決まるの?
仁 海外のどのオークションに出たか、でしょうね。価値をつくるための作品をつくり、オークションで売って、アーティストとしての価値を自ら提示しないと。
清水 ブランド牛みたいだね。
仁 同じ絵を100万円で売るか、1億円で売るかのどちらのアーティストになりたいか。それによって描く絵は変わらないけど、ブランディングの方法は変わります。「いずれこのアーティストは価値が上がる」と勧められたお金持ちがオークションで買い、「あの人が買ったらしい」という噂で、もう一段上のオークションに出ていけるわけですから。
清水 マネーゲームか。
仁 価値を上げるための筋書きをつくるプロの手にかかれば、億単位で売れる作品になっていくんです。だから、彼らとうまく組むのも大事。作品より、そのアーティスト、人に価値がつくので。
清水 すごいアーティストっぽく見せるために、変人を気取るとか、芝居したくなっちゃいそうだなあ。
お金とやる気の不思議な関係
仁 ちなみに、ここにいるのは典型的サブカルチャーな3人ですけど、日本のサブカルチャーは、個性が強すぎて「アートがすべる」って言われてます。(笑)
はいり 海外ではわかりにくいっていうこと?
仁 だからハイカルチャーにして、売っていくんでしょうね。僕なんてサブカルチャーの後半期の人間ですが、この世界を牽引してきたスターと言えば、清水さんであり、はいりさんなわけじゃないですか。
清水 確かに、私たち3人とも海外では成功できなそう。(笑)
はいり 実は私ね、最近「ライバルはバンクシー」ってあちこちで言ってたんです(笑)。二度見してもらいたい、みたいないたずら心が一緒なのかな、と思って。でも、あの落書きのまわりではものすごいお金が動いてるわけですもんね。
仁 そうです。だからただでもぎってる場合じゃないんです。(笑)