清水 ずっとはいりさんを理解するために考えてたんだけど、こういうのはどう? 犬を連れてる人がいて、「かわいいですね」って撫でる。これとはいりさんのもぎりは同じでしょ。義務でもない、対価も不要。ただ楽しくて撫でてる。
はいり そういうことです。衝動。お2人はそういう気持ちになるもの、ないんですか。
清水 だから、犬を撫でることくらいだよ……。犬を撫でるのと一緒、と思えば理解できそう。
仁 ただ独特の快楽があるってことですね。
はいり よく言ってくれた! それが言いたかったの。快楽だ。趣味とか楽しみって言うからわかってもらえなかったんだね。でも、もぎりという行為には「快楽殺人」みたいな言葉がないから、「もぎりを、快楽のためにやってます」と説明する以外ないけど。
清水 じゃあ、もうはいりさんのこと、ピュアって言わない。快楽でやってるんだからね。(笑)
仁 はいりさんって、誰に対してもウェルカムな人だし、仕事でも「こうすれば、もっとよくなるんじゃない?」って積極的に提案してくださるし、僕の意見も聞いてくれる本当に優しい人なんです。ただ、今日は決定的に弱いところがあることを知りました。
はいり 私みたいに経済感覚が欠落しないよう、できれば小さいときから、学校でお金のことを教えてほしい……。
清水 最近は「どうぶつの森」で、株に強い小学生が増えてるって聞くよ。ゲーム、やったことある?
仁 わが家も家族みんなでやってました。株ならぬ、野菜のカブをハナ垂れたブタが売りにくるんですよ。お金の単位はベルと言って、カブを90ベルで買ったり、150ベルで売ったりする。たまに700ベルくらいまで値上がることもあって、大儲けできるじゃないですか。でも売るのを我慢した結果、大暴落にも遭う。しかもカブは生ものなんで、1週間で売らないと腐って1円の価値もなくなるんです。
清水 ゲームの軸はお金じゃないのに、奥が深いね。それを聞くと面白そう。じゃあこのたとえは? はいりさんが犬を撫でるでしょう。そしたら「ありがとう」と言われて30円もらえるの。
はいり 犬から? 飼い主から?
清水 犬からもらえるわけないじゃん。飼い主からですよ。それでどんどん撫で方が上手になってきて、1回3万円くらいもらえるようになっちゃうの。そうしたら、「もう撫でたくないわ」って気分になるんじゃない?
はいり その通りです。
仁 一度対価が発生すると、変に価値が上がっていったときに、はいりさんのやる気がなくなっちゃうってことなのね。お金が発生しないからこそ続けられた10年。
はいり 気づくと、なんでも仕事につながっちゃう職業なので、できるだけ仕事につなげたくなくて。それより私は、快楽を煎じ詰めたもののほうがほしい。
清水 「快楽を煎じ詰めたもの、それが映画館のもぎりです」か。また本のタイトルみたいだね。今日は思いがけずいろんなお金の話が転がってたもんでした。