日本全国に広く分布しているギンヤンマ(写真提供:写真AC)

重松 僕は昭和38年生まれで、当時おもちゃ屋さんや学校の前の文房具屋さんで「昆虫採集セット」というのを売っていました。毒々しい色の薬液とか注射器が付いている。つまり、虫を捕って、標本を作るためのセットなんですね。

奥本 注射器が、覚醒剤を打つのに使われるとかで危険視されるようになって。

重松 ついには発売禁止に。だから、僕たちが子供の頃昆虫採集をしていた最後の世代かもしれない。

奥本 今や、公園でセミが鳴いていても、セミ捕りをしている子を見かけません。さみしいですね。

昆虫食の入門はコオロギから

重松 ところで、コオロギせんべい、僕は初めて食べたのですが、おいしかったです。

井上 コオロギのパウダーを練りこんだおせんべいですね。コオロギの香りがフワ~ッとするので、昆虫食入門の人にはいいかなと思いました。

重松 入門編としては、いい……。

井上 私はコオロギの味が好きなので、香りだけではなく、コオロギそのものをしっかり味わってほしいという気持ちがあります。

重松 そのままの姿で、ですね。コオロギはどんな味ですか?

井上 エビとかカニにすごく近いです。甲殻類にアレルギーのある人は、食べたら症状が出るかも。

重松 奥本先生は、「食べる」についてはいかがでしょう。

奥本 僕にとっては、食べるなんてもったいない。せっかく標本にできる虫が目の前にいるなら、まず、じっくり観察です。と言いつつ、食べることにも抵抗はありませんが。

重松 ハチの子、イナゴの佃煮くらいは僕も食べたことがあります。昔から昆虫食はあったのですか。

奥本 ええ、とくに長野県ですね。一部の地域では、ゲンゴロウも食べます。ただ、昔はたくさんいたのが、どんどん減って、今や、ゲンゴロウを買えば1匹6000円くらいするでしょう。

井上 常食にするには昆虫はコストがかかってしまいます。