「食べてみるとおいしいし、虫を食べる文化を調べていくうちに、タンパク質など栄養価の高さを知り、どんどん興味が深まったんです」(井上さん)

来るべき食料難時代の救世主か

奥本 タガメも、日本では絶滅の恐れがあるとして、販売目的で捕ることが禁止されましたね。

井上 なので、私が食べてるタガメはタイ産のものです。洋ナシの香りがして、すごくおいしい。

重松 頭からガブリと食べる?

井上 それもありますけど、タガメはそのフルーティーな香りを活かした料理がおいしいです。たとえば、硬い皮を切って腹の肉を取り出し、ヨーグルトと混ぜる。そこにセミをトッピング。セミはナッツみたいな味がするんですね。そのセミにチョコレートをかけてアーモンドチョコのようにして、タガメの洋梨風味のヨーグルトを合わせていただく。

重松 うわっ、ほんとうにもう、「食材」なんですね。そもそも咲楽さんと昆虫食の出会いは?

井上 最初はテレビのロケで行った長野のアンテナショップです。そこで売っていたハチの子を食べたら、クリーミーでおいしくて。その後、プライベートでコオロギのラーメンを食べる機会があったり、ヘビに触れるカフェに行ったらメニューがほとんど虫だったり。「こんなものを食べるの?」という先入観が消えました。食べてみるとおいしいし、虫を食べる文化を調べていくうちに、タンパク質など栄養価の高さを知り、どんどん興味が深まったんです。

重松 最近では、来るべき食料難の時代の持続可能な食料として注目されていますね。

奥本 今、アフリカやインドでサバクトビバッタが大量発生して農作物を食い荒らしていますね。あのニュースを見ながら、もったいないと思うんです。薬を撒いて駆除するのではなく、どんどん捕まえて、煮たり、干して味をつければ、タンパク質豊富な食料になります。あるいは粉末にして大豆を混ぜれば、ビヨンド・ミート(代替肉)にもできる。日本の食品会社が本気で取り組めばいいのに、手を出しません。それこそ先入観でバッタを見ているんでしょうね。