アフリカ大陸で大量発生したバッタの大群が中東やインドにも飛来、農作物が壊滅的被害を受けています。一方で、将来の食料危機を救うと期待される「昆虫食」。今、何かと注目の昆虫ですが、私たち人間と虫たちとのかかわりは……? 仏文学者で《虫の極め人》である日本アンリ・ファーブル会理事長の奥本大三郎さんと、昆虫食を熱愛するタレントの井上咲楽さんをゲストに迎えた今回は、《コオロギせんべい》をつまみながらの鼎談となりました(構成=福永妙子 撮影=木村直軌) ※収録は2020年6月に行いました
ギンヤンマと目が合って、ぞっこんまいった
重松 夏と言えば虫の季節。奥本先生は、ファーブルによる『昆虫記』の完訳を、30年を費やして成し遂げられましたね。『ファーブル昆虫記』は知っていても、最後まで読んだ人はあまりいない。何しろ膨大な長さです。
奥本 完訳版は、全10巻20冊になりました。小学校6年のとき、『ファーブル昆虫記』を読んで、「虫の生態を知らない人が訳したのかな」と思ったことがずっと心にあったんです。
重松 文字通り、ライフワークですね。虫のどこに惹かれました?
奥本 説明できるようなら苦労しません(笑)。僕は大阪南部、貝塚市の出身で、子供時代、まわりには田んぼ、6キロ行けば山という環境でした。田んぼには、必ずギンヤンマがテリトリーを張っている。そのギンヤンマと目が合って、ぞっこんまいって、気がつけば虫の世界にどっぷりでした。
重松 咲楽さんは、『ファーブル昆虫記』を読んだことは?
井上 奥本先生が訳していらっしゃるジュニア版を私も読ませていただきました。
重松 僕のイメージだと、若い女性と虫って、なかなか結びつかないんですけど。
奥本 虫を見て「キャーッ」。「虫をこわがる私、可愛いでしょう」というアピールの仕方はありますが。(笑)
重松 咲楽さん、ご出身は?
井上 栃木県の益子町です。山の中で自然に囲まれていましたし、子供会の集まりでザリガニ捕りや、生き物の調査をしたり。高校では、イナゴを捕って佃煮にする授業がありました。
重松 いい学校ですね。
井上 実家も山を切り開いたところにあったので、虫はそこらじゅうにいました。