わが子の学校行事に、夫は部活でいつもいない
思えば娘が小さい頃、風呂に入れる時はいつも1人で苦労した。毎日、夜9時になると決まって夜泣きが始まる。3年後に2人目が、その5年後に3人目が生まれると、年の差があるきょうだいが世話をしてくれた。娘は「もう産まないでね」と言ったくらいだ。夫が子どもの運動会に来た覚えもない。わが子の学校行事に、夫は部活でいつもいない。思い出すと今でも怒りがこみあげる。
夫が進学校に異動すると、部活に費やされる時間は、そのまま授業の準備にあてられた。大学受験を控えた息子の勉強時間よりも、夫が授業の準備をする時間のほうが長い。生徒にどれだけわかりやすく教えるかを考えると時間がかかる。
地学を教えている夫は「自分のほうが大変だ」とアピールしたいのか、「お前は家庭科だから楽だろう」といわんばかり。同じ教員なのに、相変わらず家事も受験生のケアも、当然のように聡子さんに押し付けた。
夫の父親が倒れた時も「飲み会がある」と出かけていったのには、「ええ? 親と飲み会とどっちが大事なの?」と人格を疑った。そして確信した。「きっとこの人、私が倒れても部活を選ぶのだろう」。
子どもが巣立った今、かろうじてかすがいとなるのは愛犬だ。聡子さんは、「娘の結婚式は、部活の大会の日にぶつけてやろう。あの人は、どちらを選ぶのか」と考えている。
「部活未亡人」にも年季が入り、本当に夫がいないような気持ちになることも。いや案外、部活が忙しくてそのうちぽっくり──。そう思うと、聡子さんは妙な力がわいてくるのだ。
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今でこそ、妻の「ワンオペ育児」にスポットが当るようになったが、それを当然のこととされ耐える時代を生きた妻たちの、夫への恨みは根深い。育児が終わって二人きりの生活に入ったからといって、そう簡単に夫婦の関係は修復できないようだ。