初めての一人暮らしは「無印良品」で揃えたが…

大人になってからは、どんな部屋にいれば居心地がいいのかもわからない。初めてのひとり暮らしでは、とりあえず無印良品で揃えておけばどうにかなると高を括り、どれもこれも無印で買った。すると、なんということでしょう。お店で流れるケルト音楽が、四六時中幻聴で聴こえてきそうな部屋に仕上がった。アレンジが利かない。

昨年まで住んでいた部屋は、押し入れの扉が紫だったり、欄間だったスペースにベネチアングラスが嵌め込まれていたり、トイレだけがローラアシュレイ風味だったりと、独自のセンスを持つオーナーのカラーが色濃く出ていたので借りた。これなら、おしゃれに住めなくても私のせいにはならないと、ホッと胸を撫で下ろしたのだ。

そこからまた引っ越して、現在の部屋に住んで早2ヵ月。いまだ、ラグ2枚が決まらない。新しく必要になったキッチン収納は友人に選んでもらった。自分で選んだ家具を友人にやんわり反対され、こういうときはたいてい他者が正しいので言う通りにしたら、なるほど使い勝手も良いし大正解だった。ラグも探そうかと友人は厚意で言ってくれたが、ここはひとつ、自分で頑張ると辞退した。

それから毎日、仕事の合間にネットでラグとカーペットを眺めている。サイズ、色、毛の長さ、無地か柄か。部屋の写真を撮り、ラグを置く場所に色を塗ってみたりもした。おしゃれなラグの選び方の記事も読んだ。それでも、どれが正解かまったくわからない。機能とセンスの2つを同時に問われると、頭が沸騰してしまう。

家に遊びにきた友人は、なかなか良い家具が揃っているよと励ましてくれた。彼女が指さしたものはどれも、私が実家から持ってきた、亡き母の選んだ家具ばかり。

継承しそびれた遺伝子が空から降ってこないかと、私は天を仰ぐ。このままでは、足元が寒くてかなわない。


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年齢を重ねただけで、誰もがしなやかな大人の女になれるわけじゃない。思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」……疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇