ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は、「センス」について。自分自身の部屋をどうコーディネートしたらいいのかについて悪戦苦闘するスーさんは……。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)
インテリアは私のコンプレックスに
なにごとにも得手不得手、才能の有無があり、たとえば私は人前で話をするのは苦にならないが、インテリアや盛り付けの才能は皆無。それでも私には住む家があり、選ばねばならぬ家具があり、スリッパひとつ選ぶのさえつらくてしんどくて、久しぶりに自分のことが嫌いになった。
そもそも、着る服でさえ上手にコーディネートできないのだから、部屋の装飾が上手くできるわけがない。ハチャメチャなセンスがあれば味にもなるが、自分の好みも適切な選択も気の利いた組み合わせもわからない。虚無だ。だから、いつだって私はぼんやりと冴えない部屋に住んでいる。
最も冴える部屋で暮らしていたのは幼少期だ。母親は私と違ってファッションにもインテリアにもセンスがあり、輸入家具を随所に取り入れた、なかなかおしゃれな子ども部屋を与えてくれた。
自我が芽生えるとともに、私はハードロックのポスターを壁にベタベタ貼ったり、アメリカで買ってきた、一度貼ったら剝がせない花柄のトリムボーダー(細長い壁紙)を貼ったり、挙句の果てに長さが足りず、部屋の半分だけ壁の一部が花柄になったりと散々だった。当時はまだ「好きなもの」はわかったが、調和を考える能力がまるでなかった。10代後半でそう気付いてから、インテリアは私のコンプレックスになった。