ガラスの城の約束

監督/デスティン・ダニエル・クレットン 
脚本/デスティン・ダニエル・クレットン、アンドリュー・ラナム 
原作/ジャネット・ウォールズ(『ガラスの城の約束』ハヤカワ文庫刊) 
出演/ブリー・ラーソン、ウディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツ
上映時間/2時間7分 アメリカ映画
■6月14日より新宿シネマカリテほかにて全国順次公開
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ある日、ホームレスの父と再会し……

マンハッタンの瀟洒なアパートメントに暮らす若いカップル、ジャネットとデヴィッド。高級レストランでの会食の帰り、ジャネットは車道に飛び出してきたホームレス風の老人を見て動揺する。それは彼女の父、レックスだった。

『ニューヨーク・マガジン』誌のゴシップ・コラムニストとして人気を博すジャネットと、ファイナンシャル・アドバイザーである恋人・デヴィッドは、ジャネットの両親が空き家に勝手に住みついていることを知っており、そのことを恥じていた。もしも両親のことを聞かれたら、彼女は「母はアーティストで、父は起業家です」と答える。まったくの噓ではない。だが、その夜、ジャネットはいかにもホームレス然とした父が目の前に現れたことに驚き、また、思わず顔をそむけた自分自身にもショックを受けたのだった。

1960年生まれのジャネット・ウォールズが書き上げた自叙伝『The Glass Castle』は、2005年に出版されるや全米の売り上げランキングに1年以上ランクインするベストセラーとなった。本作は、この自叙伝を映画化したもの。ジャネットを演じるのは、『ルーム』(15年)でアカデミー賞主演女優賞に輝いたブリー・ラーソン。監督は、ラーソンの出世作である、10代専用の短期保護施設の日常を描いた『ショート・ターム』(13年)で注目された、ハワイ出身の日系人デスティン・ダニエル・クレットン。

ジャネットの破天荒な父親を演じるのは、近年『スリー・ビルボード』『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(ともに17年)などで再ブレイク中のウディ・ハレルソン。その妻でジャネットの母・ローズマリー役は、ナオミ・ワッツ。かつてレックスは、家族のためにガラスの家を建てる夢を抱いていた。ローズマリーは絵を描くことに夢中だ。両親とも、よく言えば自由人で、金銭に頓着せず、常識にもとらわれない。このあたりは、ヴィゴ・モーテンセン主演の『はじまりへの旅』(16年)を彷彿とさせる。山奥に10年間暮らした一家の話だ。

 

だが、レックスはだんだんアルコールに溺れるようになり、貧乏暮らしは悲惨を極めていく。10代のジャネットと姉、弟、妹は、この境遇から逃れるため、両親には内緒でお金を貯めるのだった。ジャネットは、こうした過酷な子ども時代を回想することで、むしろ、父親との大切な記憶の数々を思い起こしていく。運命を自分の力で切り開いてきたジャネットだが、人生の初期に自尊心を強く持つよう導いてくれたのは、父だった。距離をおいて過去を見つめなおしたからこそ、父の愛情を再確認する。ジャネットのその気づきの過程が感動的だ。

 

氷上の王、ジョン・カリー

監督:ジェイムス・エルスキン
©New Black Films Skating Limited 2018 /©2018 Dogwoof 2018

 

フィギュアスケートをスポーツから芸術へと昇華させながらも、エイズにより1994年に亡くなった英国人金メダリスト、ジョン・カリー。その44年の生涯にわたる孤独な闘いと功績を貴重なパフォーマンス映像やインタビューで追うドキュメンタリーだ。彼の美しいオーラに心が震える。5月31日より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開

 

クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅

監督:ケン・スコット
©2018 Copyright BRIO FILMS-SCOPE PICTURES-LITTLE RED CAR-TF1 AUDIOVISUELS-SONY PICTURES ENTERTAINMENT FRANCE All rights reserved. Brio Films @Sébastien Bossi

 

ムンバイで暮らす青年アジャは憧れのパリへ行き、家具ショップで素敵な女性と出会う。だが、売り物のクローゼットの中で居眠りしたばかりに、彼女を置き去りにして世界中を旅することに!フランスの名女優ベレニス・ベジョとのダンス・シーンも大いに楽しめる。6月7日より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開