『婦人公論』の好評連載「藤原しおりの TOKYOで世界一周」。毎回、TOKYOに息づく世界各国のカルチャーや、人々の暮らしを藤原しおりさんがレポートします。今回は「下北沢で踊る!キューバな夜」。キューバの音楽、そしてダンスを堪能します。
※本取材は、緊急事態宣言発令前に行いました
※本取材は、緊急事態宣言発令前に行いました
キューバには、二面性がある
「キューバ人はね、どんなに悲しい曲でも『悲しい〜♪』って踊りますよ」
そう教えてくれたのは、日本でダンス講師をしているキューバ人のアナヤンシさん。その日、下北沢のお店ではキューババンドの生演奏が行われていた。互いに目配せし、アナさんは踊り、バンドは演奏する。それはまるで会話をしているよう。「キューバ人にとって音楽はあいさつ」というアナさんの言葉に納得した。
キューバに馴染みがないのに、すごく心地良いのはなぜだろう?
そんなふうに思っていると、日本キューバ友好協会の松竹(まつたけ)照代さんは言った。「キューバにはね、二面性があるの。陽気さと切なさ。しんどいことはたくさんあるけど、笑い飛ばそう、踊ろうってね」。
なるほど、切なさか。ただ明るいだけじゃなく切なさがあることで、ほどよい塩梅となって私の心に届いたのかもしれない。「また明日も頑張ろうね」、そんなふうに励ましてくれるものがキューバ音楽にはある気がした。