ファンとの距離感

バービー 私が言いたかったのは、サブカル好きな女性のなかには、「いとうせいこうさんと私は、絶対に気が合う」って思い込んじゃうタイプがけっこういたんじゃないか、ってことなんです。

清水 ああ、なるほど。「私を理解してくれるのは、いとうさんだけだ」っていうファン心理ね。

バービー そういう、ちょっとメンヘラな感じの女子たちが、結果的に寄ってきたんじゃないかと。

いとう 失礼じゃないか、人のファンをメンヘラ扱いとは。(笑)

バービー そのメンヘラたちにどういうことをされたのか、に一番興味がありました。

清水 どんな目に遭ったの? 興味あるわあ。

いとう 期待外れで悪いけど、まったく大丈夫でしたね。「好きだ」と言ってくれる読者に、僕から踏み込むことはないですし、それこそ読者のほうも、距離を取って接してくれてたと思うから。

清水 言われてみれば、いとうさんって、必要以上に他人に踏み込まない印象があるかも。それは、いとうさんの性分だろうけど。

いとう そもそも、僕は座持ちが悪いんですよ。「読んでくれてるんですか。どうも」って言って、そこで話が終わっちゃう。そのあと相手としーんとしているの、切ないじゃないですか。

バービー でも、突き放せば突き放すほど、ついてきちゃうファンはいますよね。

いとう ある一定の距離をずっと保っていると、「いとうさんって、踏み込みすぎると機嫌を損ねる人なんだな」って感じ取ってくれるようになる。相手から慮ってくれるのはありがたいことだし、たまにちょっと気さくな面を見せると、逆にすごくいい印象を持ってもらえるから、ちょうどいいんだよ。